星雲・星団のスケッチ
5. スケッチ方法
作成:滝 敏美
2007年1月14日
わたしのスケッチ方法を以下に紹介します.
5.1 計画
(1) スケッチ対象を決める
各種の天体カタログ,本や雑誌に星雲・星団のリストが載っています. 3. 星図とカタログの項を見てください.
自分の好きな天体をを選びましょう.人気のあるよく知られた天体を選ぶのも良し,あまり知られていない難しい天体を選ぶのもおもしろいでしょう.
(2) 背景の星が入ったスケッチ用紙を作る
視野の円を描いた白紙にスケッチするのがこれまでの普通のやり方ですが,わたしはこのやり方は使いません.これにはいくつか理由があります.まず第一に,観望する際にひとつの倍率だけを使うわけではないので,視野の広さが変わることです.次に,背景の星が入ったスケッチ用紙を使うからです.このスケッチ用紙を使えば,スケッチ時間を短縮できますし,スケッチが正確にできます.
背景の星を入れたスケッチ用紙を作るには,星図(プラネタリウム)ソフトを使います.わたしはフリーソフトの"Hallo Northern Sky" を使っています.このソフトは表示する星の等級を選べますし,縮尺も自由にできます.
星図ソフトで対象天体を中央に表示し,適切な縮尺を選びます.いくつかの異なった縮尺のスケッチ用紙を作成しておくことをおすすめします.そうすれば,実際に天体を見てスケッチするときに適切な範囲の用紙を選べます.また,尺度と方角もスケッチ用紙に入れておきましょう.わたしは,尺度に応じて30分,1度,2度の円を入れています.
あなたの望遠鏡で見える最微光星よりも1等級以上明るい星までプロットするようにしましょう.
こうすることで,見えない星をスケッチに残してしまう危険がなくなります.スケッチするときに,実際に見えている暗い星を追加しましょう.
白紙に黒で星を印刷します.わたしは普通のA4コピー用紙を使っています.
5.2 観測地で
(1) 空の状態の記録
天体を観察する前に,空の状態を観察し,記録します.空の状態で星雲・星団の見え方は大きく変わりますので,他の人の観察と比較したり,自分の他の日の記録と比較する際にこの記録は重要です.
空の状態を客観的に記録するには,使用している望遠鏡で見える最微光星の等級を調べます.わたしは,天の北極星野を使っています.天の北極は高度が季節,時刻で変化しないので,いつも同じ条件です.
北極星野のpdfファイルはここにあります.
なるべく高い倍率を使って最微光星を見つけてその等級,使用倍率,時刻を記録します.倍率が高いほど暗い星まで見えますので,使用倍率の記録は大事です.
(2) スケッチ
スケッチ対象の天体に望遠鏡を向けます.天体によっては望遠鏡に捕らえるのがとてもむずかしいものがあります.明るい天体は肉眼星図でも簡単に望遠鏡に導入できますが,暗いもの,特に表面輝度だ低いものはむずかしくなります.これだけは経験がものをいいます.よい星図を使うこと,星座の星の並びをよく知っていることが大事です.星図をうまく使い分けましょう.6.5等までの肉眼星図,8.5等までの双眼鏡・ファインダー用星図,9等までの望遠鏡用星図の3種類持っているとよいでしょう.わたしの場合は,滝星図(6.5等),滝星図(8.5等),ウラノメトリア2000で満足しています.必要に応じて,星図ソフトで対象天体専用の詳細星図を自作すればよいでしょう.
天体を導入したら,スケッチを始めるまえによく天体を観察します.倍率をいろいろ変えてみましょう.スケッチをするのにひとつの倍率だけを使うのはよくありません.ひとつの天体でも場所によって見え方が変わります.適切な縮尺のスケッチ用紙を選んでそれに鉛筆で見えたものを書き込みます.天体の大きさと位置は,プロットしてある星との位置関係をもとに記入していきます.プロットしてある星よりも暗い星が見えているはずですので,対象天体の近くにあるものだけでも記入します.図5-1に例を示します.大きい天体をスケッチするには時間がかかります.わたしの例では,アンドロメダ大星雲のスケッチに1時間20分かかっています.
使用した接眼鏡,日時,観測地,メモ等をスケッチ用紙に記録します.これは他人に見せるスケッチではありませんので,スケッチ用紙が汚くなってもかまいません.大事なことは,あとできれいなスケッチを再現できるように必要な情報をしっかり残すことです.そのためにはメモが大事です.
5.3 室内で
(1) スケッチを完成させる
室内に戻ってスケッチを完成します.天体を見た印象が薄れないうちにやりましょう.次の日になっても,じゅうぶん覚えているものです.
新しいスケッチ用紙を準備します.このスケッチ用紙には視野の円を入れません.スケールを示す棒を入れます.屋外で作成したスケッチをもとにしてきれいなスケッチを作成します.図5-2 に例を示します.
(2) デジタル化
スケッチのデジタル化は必ずしも必要ではありませんが,デジタル化することにより保存が容易になりますし,ポジに変換することでよりリアルなスケッチになります.
図5-3 に例を示します.
図5-1 はくちょう座の網状星雲 NGC6992-5 の生のスケッチ
参考となる視野円が入っていることに注意.
スケッチ中に星の並びをわかりやすくするために,星を結ぶ線を入れている.時間,接眼鏡のメモも入っている.
図5-2 屋内で清書したスケッチ
スケッチデータもスケッチ用紙に印刷してある.
図5-3 デジタル化してポジにしたスケッチ(視野の背景に青と緑を少し入れた)
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